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おもしろく こともなき世を おもしろく

日本の戦前は豊かだった。

学生の頃、歴史の授業ではその教科書の最後の方は時間がなかったからか、もともと教えることはなかったからなのか、あっという間に終わってしまったので、未だに近現代史のことがよく分からなかったりします。

当時、教科書を読んだのは、大正デモクラシーぐらいまでで、そこまでの日本の文化は発展していったのに昭和になるととたんに暗くなり、第二次世界大戦の前は暗黒な世界になっているように思い込んでいたのでした。


ところが、

昭和36年頃・・・近所の家庭ではお膳で食事をしていたのだが、我が家ではテーブルでしばしばナイフとフォークを使って食事するようになった。

皿にのるのはクジラのステーキやトンカツなどで、牛ステーキはまだなかった。

始めて牛肉の塊が洋食として食卓に出てきた時は、ビフテキと呼んでいた。

修学旅行の時、大食堂で洋食が出た。

だれもナイフとフォークで食事できる子がいなくて、
「お箸がいる人?」
みんなお箸で食べていた。

我が家は金持ちではない。
父はしがない地方公務員なのに、わしは一見、育ちの良さそうな子供になった。
 

我が家はなぜ早くから洋式の食事を取り入れていたのだろうか?

テレビも近所では早く我が家に来た。

まだテレビのない家の子が、うちの縁側にずらっと寝そべって見に来ていた。

だんだんテレビに近づいて靴のまま畳の上に上がって来ていた。

母が、夕方になったら窓を閉めた。

すると、みんな縁側に上がって、窓に顔をくっつけて必死で見ていた。

仕方なく母が、家に上げることにした。

けれどみんな足も靴も汚れていて、あとで畳をふかねばならなかった。

父が帰ってきて、夕食になっても帰らずに見ている子もいたので母も困っていた。

その頃のテレビ番組は、まだアメリカ製のホームドラマやアニメが多かった。「名犬ラッシー」や「奥さまは魔女」で、ナイフ・フォークで食事するシーンを見た。
「ポパイ」や「トムとジェリー」で、チーズ、コーラ、ハンバーガー、ステーキなどの食べ物のことを知った。

我が家は戦後、アメリカ文化の影響をいち早く受けていたと、つい最近までわしは思っていた。

イラク戦争後、イラクはアメリカの占領統治が成功するだろうか?
日本のGHQをモデルにした統治によってアメリカ寄りの政権を作り、国民を親米に洗脳できるだろうか?・・・という問いが浮上したとき、次のように言う人が多かった。

イラクもそのうち経済的に豊かになればアメリカに従うようになる。

日本も戦後、豊かになったから占領統治を受け入れたんだ。

日本はアメリカに「開放」されて、「自由」と「民主」を手に入れたんだ。

日本国民を軍部から「開放」してくれたアメリカに感謝しなくちゃ。

「アメリカが『開放』してくれたから、日本は豊かになった」と、思っている者がいる。
日本は豊かになったのは戦後だと思っている者がいる。

実はこれは歴史を知らぬが故のとんでもない勘違いなのだ。

わしの母は若い頃----昭和10年(1935)年頃---父親(つまり、わしの祖父)に連れられて、福岡の繁華街、文化の中心街だった中洲に、しばしば洋食を食べに行っていた。

当時は、チキンライス、カレーライス、トンカツ、お子様ランチなどをナイフとフォークで食べていたという。

わしの父は中洲で、芝居や映画や漫才や芸者遊びやらに興じる道楽者で、家庭でも自分で洋食を作りナイフとフォークで食していた。

これは特にアメリカの文化ではなく、明治維新から西洋文化を取り込んできた延長にあるものだった。

日本で大衆文化が最も発達した時期は、昭和8〜9年から、昭和14年くらいまである。生活が楽になり、娯楽が増え、映画も流行歌も、モボ、モガなどもこの頃流行り、ゴルフが流行って名門ゴルフ場もほとんどこの頃できている。

第一世界大戦後の世界恐慌の折、日本は銀行がずいぶんつぶれる荒療治をして、世界で一番早く、恐慌脱出に成功した。
満州事変がひとつの契機ではあったが、為替レートは円が下がって輸出が伸び、日本は綿製品がアジアからアフリカまで席巻し、イギリスのランカシャーの綿製品が没落するほどだった。

昭和7〜8年から、昭和12〜13年にかけて日本経済は著しい伸びを示す。
この経済の右肩上がりは、明治の初めから、ずっと続いていたのである。

山本夏彦氏の「誰か「戦前」を知らないか」によると、昭和10年は忠犬ハチ公が死んだ年で、ネオンは輝き物質はあふれていたという。

戦前から純喫茶ではコーヒー、紅茶、ケーキと「おしぼり」を出していた。
いま全盛のものは戦前にみんなあった。
なかったのはテレビだけだったと山本氏は回想している。


以上は、小林よしのりの戦争論3から。



日本の今の文化とか民主主義とかは、別に戦後にアメリカが持ち込んで花開いたものではなくて、そもそも明治維新から日本人が脈々と築いたものということが書かれています。
この本は、自分たち日本人のお祖父さんとかその上の世代とかが、いかに日本のために戦ってきたのかを、教えてくれます。

久しぶりに読み返しましたが、いろいろと考えさせてもらえました。

特攻隊の項は思わず涙が出ます。

新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論〈3〉
新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論〈3〉小林 よしのり

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