近代マグロの話です。
この本読むまでは、なんだ、たかが養殖じゃないのか、ぐらいにしか思っていませんでした。すいません。
クロマグロは、海のダイヤとも言われる魚の中の魚です。
なんてことも知りませんでした。
そもそもが、マグロの種類さえ知らなかったのですから、完全養殖がどれだけ凄いかが分かるわけがありません。
近大は、クロマグロの前にいろいろな魚の人工ふ化・養殖に成功しています。
ヒラメ、真鯛、石鯛、ブリ、カンパチなど。
そういう成功体験があっても、クロマグロは、最強の難敵でした。
大間のクロマグロで有名なマグロ。
その一本釣りから勇壮な魚だと思いがちですが、ものすごい繊細な魚です。
まず、稚魚から育てることから始めますが、育ちません。
やっと、少し大きくなったら、理由もなく死んでしまいます。
よくよく調べていくと、夜、車のヘッドライトに驚いて生簀に体をぶつけたのが原因と分かりました。
まさか、あの大きな体なのに光にビックリするとは思いませんでした。
マグロを育ててからは、完全養殖へと実験を重ねていきます。
これが、またまた大変でした。
親となるマグロから、なぜか11年間も産卵がなかったのでした。
普通、人はこうなってくると諦めてしまうのですが、この本の著者である、熊井英水さんを中心とした近大水産研究所は、考え考え困難に立ち向かっていきます。
そして、そこに神様が現れたように、いきなり産卵が再開されました。
研究は、32年間。
この本を読んで、映画「舟を編む」を思い出しました。
舟を編むでは、苦労をかさね辞書を作っていきます。
辞書を作るのも大変ですが、クロマグロの完全養殖はもっと大変です。
なにせ前例がありません。
”近大クロマグロ物語”とかで映画になったら面白いと思います。
この本の後半では、マグロや魚を取り巻く世界的問題が提示されています。
魚は、乱獲されています。
このままでは、いなくなるほどにです。
漁の仕方がえげつないのです。
特に旋網漁(まきあみりょう)と言うのは、既に普通に考える漁を越えてしまっています。
まさに、海の中の生物を一網打尽にする漁です。
こういうのは、一日でも早く禁止にすべきですが、なかなかに経済合理性が絡み難しそうです。
鯨を取ることを禁止する前に、旋網漁をやめるべきだと思うのですが。
マグロ
分類上は、スズキ目サバ科マグロ属
種類は、クロマグロ、ミナミマグロ、ビンナガ、メバチ、キハダ、コシナガ、タイセイヨウマグロの7種類。
大トロが取れるのは、クロマグロとミナミマグロ。
メバチからもトロが取れます。
ビンナガからは、ビントロと呼ばれる部位が取れます。