Bookrock

おもしろく こともなき世を おもしろく

ネット決済での息子のクレジットカード決済に対して支払い拒否を認めた判決はどうなのか

5月2日の朝日新聞夕刊の記事

ネット決済
カード本人確認「不備」
息子の無断使用 支払い拒否認める

というものがあった。

その内容を書く。

インターネット上で子供が無断で親のクレジットカードを使った時、親にはカード会社にその利用分を支払う責任があるかどうか。そんな争点の訴訟の判決で、長崎地裁佐世保支部(竹村昭彦裁判官)が「カード番号などを入力するだけで(暗証番号なしに)決済できるシステムは第三者の不正使用を妨げない」としてシステムそのものの不備を指摘し、親が支払う必要はないと判断していたことがわかった。
判決は4月24日。
〜中略〜
訴訟は、クレディセゾンが長崎県佐世保市の会社員男性(58)に利用代金約300万円の支払いを求めて提訴。代金は、利用当時19歳だった男性の長男が、男性のカード番号や有効期限を控え、無駄でネット決済を繰返した分だった。
〜中略〜
会社員男性側は、「この方法は(ネット決済でクレジットカード番号と有効期限を入れる決済方法)盗み見するだけで不正使用できる。カード会社は、カード番号などを入力するだけで暗証番号がなくても決済できる方法もあると事前に説明する義務がある」などとして支払いを拒否していた。

という記事です。
 

 
ここで言う暗証番号と言うのは、そもそものクレジットカードの申し込む時につける暗証番号ではないとは思います。クレジットカードを暗証番号をネット決済をするたびに入力するなんてことにしたら、フィッシング詐欺の餌食になります。

何せ、クレジットカードの暗証番号と言うのは、銀行のカードの暗証番号と同じかそれ以上のものであり、暗証番号が分かればATMでキャッシングができてしまいます。

そういう大事な暗証番号をクレジットカード会社以外のインターネットショッピングサイトで入力させることが良いというわけがありません。

とすると、この暗証番号は何かと言うと、おそらく3Dセキュアと言うネット決済専用のパスワードと言うものでしょう。

この3Dセキュアは、VISAもMasterCardもJCBも一応の機能は持っています。

VISAは一般にVISA認証サービスと言います。
MasterCardはSecureCode
JCBはJ?Secureと言っています。

ところが、この方式は結構面倒くさいのです。まずカード保有者は、カード発行会社のサイトでこの申込をして、3Dセキュアのパスワード発行をしてもらわなければなりません。

さらに、面倒くさいのは、ショップの方です、今までのショッピングサイトの決済の流れを変えなければなりません。これが費用がかかったりします。

カード保有者にもショップ側にも負荷をかけるため、なかなか広がりません。

さらに、この方式が大きく広がっていないため、導入したショップにとっては、難しいことが起こります。今まで、カード番号と有効期限でカード決済できていたものが、ネットショッピング専用のパスワードの入力を求められるため、そこで止まり、支払いまで行かなくなります。

となると、商品さえ売れなくなってしまいます。

商品が売れないと言うことは、ショップにとっては大変な出来事であり、ますますこのネットショッピング専用パスワードの導入が進まなくなるのです。


今の、カード番号と有効期限で決済ができる方式には、セキュリティの問題があることは間違いないのですが、それを補完するために暗証番号に安易に結びつくのは、どうかなあと思います。

暗証番号と言うものを思い出してみてください。

色々なサイトの会員になるために、IDとパスワードを登録します。一つ二つなら憶えていますが、そのうち多くなるとどのサイトも同じIDとパスワードになったり、そうじゃなかったら手帳などに控えたりするわけです。

とすると、誰かに見破られる可能性も高くなる。ということを考えると暗証番号もオールマイティではないのですね。

だったら指紋認証とかをやればいいとかと言う話になるかもしれませんが、指紋認証とかは、まずインフラの構築が大変です。各家庭に指紋認証の機械を配る必要があります。

さらに、指紋認証を厳しくすれば本人の指紋でもNoを返すことが多くなります。すると、ものが買えません。本人であったとしてもです。

さらに、指紋とかを登録して保管する機関が必要です。いたるところで指紋を登録するのは、面倒くさいし、気持ちも悪いです。

ということを考えていくと、利用のしやすさとセキュリティは微妙なバランスの上にあると思います。


今回の判決で一番気になったのは、クレジットカードを不正に使ったのが、19歳であったことです。18歳以上を大人にしてもいいという意見がでる状況の中でも、19歳の息子が不正に親のクレジットカードを使ったことが罰せられないと言うことも不思議な話です。

どうも、この判決は、カード会社を狙い打ったような感じがしてなりません。

300万円も使うまで分からない親も親でないかともおもうのですが。数日で使ったのなら親も分からなかったのかも知れませんが、それにしても、まずは子供に対して、買ったものは支払えと言うのではないでしょうかね。

19歳の息子が親のクレジットカードを盗み見してネットでものを買ったのを、親は支払いを免除されてもいいんでしょうかね。

こういう世の中を作っていいんでしょうかね。

不思議な国”ニッポン”ですね。


【参考記事】
カード番号だけでネット決済「不正防げぬ」 地裁判決