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ほんとうの環境問題とは・・・

7月7日から北海道の洞爺湖でサミットが始まる。

洞爺湖サミットが開幕へ、実質的な成果には懐疑的な見方も
主要国首脳会議が7日から北海道の洞爺湖で始まる。食品や燃料の価格高騰やアフリカの貧困問題、地球温暖化対策などさまざまなテーマが話し合われる見通しだが、実質的な成果には懐疑的な見方もある。



養老孟司と言えば、バカの壁という書籍が有名。


その養老孟司と早稲田大学国際教養学部教授の池田清彦が書いた(対談も)のが、この「ほんとうの環境問題」である。

ほんとうの環境問題ほんとうの環境問題
池田 清彦

新潮社 2008-03
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環境問題と言うことで、かつての環境問題は自然破壊と公害のことであったとか、ペットボトルなどの身の回りの環境問題の話、自然破壊と人口増加やバイオ燃料、水力発電太陽光発電などが綴られている。


その中で、たとえば、食料の話。

------ここから引用-------
魚に関連して言うと、ブラックバスが増えたことが問題になっている。ブラックバスも美味い食べ方を見つけて、どんどん食べてしまえばいいのである。国内にあるもので食えるものを食えば、(食料の)自給率は上がるのである。
------ここまで-----------

確か、椎名誠のなんかのエッセイでブラックバスをおいしく食べると言うものがあったように記憶している。ブラックバスというのは、食べられないと言う先入観しかないため、釣っては捨てて釣っては捨ててを繰り返しそれをキャッチアンドリリースとか言っているようだが、せっかく釣ったものを湖とか川に返すため、ブラックバスは全く減らず、日本固有の魚を食べてしまうことから、生態系を変えると問題視されているが、釣ったブラックバスを食べてしまえば、いきなり良い魚になってしまうのではないだろうか。

ブラックバスの駆除とかがたまにテレビでやっているけど、あれ、相当に金がかかっているのではないかなあと思う。


また、少子化対策に金をばらまくのは錯誤と言うところでは、

-------ここから引用--------------------
民主党はいま、少子化対策として子供一人あたり月に2万6千円の子供手当を出そうという法案を提示している。その法案がもしも通ったら、3人の子供がいる家庭は、子供が生まれてから中学校を卒業するまでに毎年94万円近くの金をもらえることになる。すなわち、15年で1400万円である。
その政策を施行するのに必要な金は年間5兆8千億円だという。これは、国家公務員に対して年間に支払われている金額(5兆4千億円)よりも多い。
--------ここまで--------------------

こういう多額の金を使おうとする政策であるが、それは、もともとの貧乏人にとっては、お金のために子供を作ろうということにしかならず、中学校を卒業したらその家庭には不要なものとなり、また、その子供がお金のために子供を作るという問題をはらんでいるものであり、長い期間で見た場合、良い政策とは思えないと言うことが書かれている。
そもそも何で少子化が悪いのかが論議されていないのではないかということである。日本の人口が6千万人ぐらいになれば、食糧問題も土地の問題もクリアされるのであろう。
どうも、少子化問題は年金問題とすり替えられて語られることも多く、多くの老人の年金を支払うためには、支払う方の人口が多くないといけないという単純な計算である。
これは、そもそも、若者にとって最低賃金を増やすことや、土地を含む値段が低ければ、今よりよほど生活しやすくなるかもしれない。
ということまで考えると、高度な教育が受けられる環境をつくることこそが、将来の日本のためになるということもあるのではないだろうか。


さて、地球温暖化についてであるが、本書では以下のように書かれている。
すこし長くなるが、そのままの方がいいと思うので、引用する。

-----ここから引用-------------
とにかくこのままでは100年後に気温が2.8℃上昇し、海面が35センチあがるのだという。それを引き起こすのが炭酸ガスだという理由から、温暖化予防のために京都議定書を守ろうとして年間1兆円もの金を注ぎ込んでいるのである。
仮に、IPCCの予測が完全に正しいとしよう。IPCCは、地球温暖化の93%が人為的な要因であるとして、そのうちの53%が炭酸ガスのせいだとしている。ということは、炭酸ガスが温暖化に与えている影響は、93%×53%だから49.9%だという計算になる。つまり、温暖化への炭酸ガスによる影響は50%弱と言うことになる。
世界では毎年、265億トンほどの炭酸ガスが出ている。たとえば今年、約256億トンの炭酸ガスが出ていて、来年になればまた約256億トンの炭酸ガスが出る。よく勘違いされるのだけれども、京都議定書を守れば空気中の炭酸ガスが減ると思っている人がいる。それはもちろん間違いである。炭酸ガスは毎年256億トンずつ排出されていくわけで、京都議定書を守ろうが守るまいが、炭酸ガスの総量は増え続ける。石油、石炭、天然ガス等の使用をストップしない限りは、炭酸ガスの総量は減らないし、もちろん、現状維持さえもできない。そんなこと分かってい人が、なんとなくムードに乗じて「炭酸ガスを減らしましょう」などと言っている。
京都議定書を守るために環境省の役人は、自分たちの名刺にも「チーム・マイナス6パーセント」という謳い文句を刷り入れて、「6パーセント削減」を目標にやっているけれども、そういうのを見て、日本が京都議定書を守れば炭酸ガスが6%減るというような勘違いをしている人がいる。それは、全然、違うのである。256億トンの炭酸ガスを毎年出すと、100年で2兆6500億トンの炭酸ガスが排出されることになる。単純にいえば、その排出量のうち何パーセントを減らせるか、というだけのことである。
京都議定書の対象になっている国すなわち先進国が出すCO2は256億トンのうちの約6割、そのうち京都議定書を批准する国が出しているCO2は、さらにその6割ほどである。つまり、60%×60%で、36%である。あとの4割の先進国、アメリカやオーストラリアなどは、京都議定書を批准していない(オーストラリアは2007年秋に政権が代わったら、2007年12月に批准したが)。最大のアメリカは、全体の22%分を排出している。日本のCO2排出量は世界のCO2排出量の5%に過ぎない。
世界のCO2排出量の36%を出している国々が京都議定書にのっとって排出量を約6%減らしましょうと言っているわけだから、36%×6%で、それは世界のCO2排出量全体の2%を削減しようとしていることなのである。だから、京都議定書をもし批准国全部が100年間ちゃんと守っても、、100年で2兆6500億トンの排出量のうちの約2%が減るだけである。IPCCの言うように、もしCO2が温暖化の原因の5割を占めているのだとしたら、京都議定書を守ってCO2排出量を目標通りに削減することによって温暖化を妨げるのは全体の1%でしかない。
もし、IPCCの予測通りに、100年で海面が35センチ上昇するとしたら、京都議定書を守ればそれを1%程度は押さえることができる計算になるわけだ。つまり、35センチ上昇するところを34.65センチほどに抑えられるという、ただそれだけのことである。
前述のように、日本のCO2排出量は世界のCO2排出量の5%だから、日本は京都議定書を守って自国のCO2排出量を6%減らすことによって、世界のCO2排出量の0.3%を減らすことができる。温暖化に及ぼすCO2の原因が5割であれば、日本の温暖化抑制の貢献度は0.3%の半分の0.15%だ。今世紀末までに気温が2.8℃上がるというIPCCの予測が正しければ、日本はそのうちの0.15すなわち0.004℃を下げるのに貢献するだけなのである。そのために日本は1年間に1兆円を使っている。もしそれを100年やるなら100兆円もの金を使うことになる。
--------ここまで----------------

ここで、書いてきたIPCCだが、Wikipediaによると、

気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)とは、国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構である。学術的な機関であり、地球温暖化に関する最新の知見の評価を行い、対策技術や政策の実現性やその効果、それが無い場合の被害想定結果などに関する科学的知見の評価を提供している。数年おきに発行される「評価報告書」(Assessment Report)は地球温暖化に関する世界中の数千人の専門家の科学的知見を集約した報告書であり、国際政治および各国の政策に強い影響を与えつつある。

IPCC自体が各国への政策提言等を行うことはないが、国際的な地球温暖化問題への対応策を科学的に裏付ける組織として、間接的に大きな影響力を持つ。アル・ゴアとともに2007年ノーベル平和賞を受賞。


と言うことなので、IPCCとは、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構というわけである。


さて、地球温暖化であるが、温暖化って、そもそもそんなに悪なの?
と言う単純な疑問を持ったりする。

暖かいより寒い方がよっぽど暮らしにくい。

赤道直下と南極のどちらかに住まないと言われたら、赤道直下と即座に答えると思う。寒いより、暑い方が、なんとかなるように思う。

温暖化ということで言うと、地球全体が暖かくなったら、作物はもっとできるはずだし、人口増加が危惧されている世の中にあっては、喜ばしいことではないのかあ、という意見もある。
確かに、単純に考えると地球が寒くなり氷河期なんかになったら食べ物も本当に少なくなり大変だなあと思う。
亜熱帯の動植物が日本でよく見られるようになったとか言うけど、それってどのくらい大変なのかって実は分からない。
異常気象という言葉に踊らされ、今まで見たことがないものを見るのはすべて恐ろしいみたいな錯覚に陥っているような気がする。

テレビというものが、大きく影響しているんだなあと思う。

テレビのように、人間の視覚と聴覚に同時に訴えるものの影響力は大きい。
特に、温暖化・温暖化・大変・大変とあおっているのは、NHKとテレビ朝日かなあと感じる今日この頃。


本書、「ほんとうの環境問題」で一番良かったのは、
日本の責任は、60分の1と言うことである。

世界の人口60億人、日本の人口は1億人である。

だから、60分の1が最低限に責任を負うものであり、そこから案件ごとに考えていけばいいのではないだろうかと言うことである。そういう線がハッキリしていると、いろいろなことが考えやすくなるのではないだろうかと思う。

また、世界的に大きく貢献していることも多いので、それもしっかりと言えると思う。


なにせ、日本人は昔から外交下手である。

僕が歴史の中で知っている範囲で言うと、唯一外交ができたのは。明治維新後数十年ぐらいかと思う。それ以外は、おしなべて下手である。

下手なら下手で、中心線を持っていれば、それがより所になると思うのだけど。


環境問題というのは、いろいろ難しいが、この本は参考の一つになると思う。