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現場力を上げて企業の価値を高める。「現場論」について

現場論_「非凡な現場」をつくる論理と実践 (Japanese Edition) by 遠藤 功

この著作を読んだ感想です。

私は日本企業はあくまでも「体質」で勝負すべきだと思っている。中途半端に「体格」を追求するのではなく、企業の「体質」を磨き込み、卓越した組織の力で世界と戦う。これなくして日本企業の未来を描くことはできない。

組織の力で世界に勝っていく。

日本企業の優位性をもっと高めることで世界の中で勝っていく。

 

現在進行性:現場では何かが今まさに行われており、物事が現在進行している。

予測不可能性:現場では偶発的なことが起こる可能性が常にある。これからどうなるのか、何が起こるのかわからない。

即興性:予測していなかったこと、偶発的なことに直面した時、人はその場で即興の反応をしなければならない。こうした即興的な行動が、また予測しなかった結果を産み出して、現場の様子は絶えず変化し続ける。

具体性:現場は常に具体的である。特定の時に、特定の場所で、特定の人々が関わり合う。現場はどれも一回的であり、ひとつとして同じものがない。

複雑性:さまざまな人や物や文脈が絡み合って成り立っているのが現場である。何が原因で何が結果かを明確に分離することが難しく、ひとつの事だけを抜き出して理解することは適当ではない。

現場というのは、こういうようにいろいろな性格を要している。

現場は一回性の中で、やり遂げていかなければならない。

そこが面白いとも言える。

 

現場は固定的、断面的なものではなく、流動的、連続的な「生き物」だ。過去から未来に向かって進行する中の「いま・ここ」が現場である。

流動的、連続的な生き物とは言い得て妙な表現。

保つ能力(capability to maintain)

よりよくする能力(capability to improve)

新しいものを生み出す能力(capability to innovate) 

現場は、この3つの形態がある。

どれも大事なファクターだけど、保つ能力よりより良くする能力の方が、より良くする能力より新しいものを生み出す能力の方が難易度が高い。

そうは言っても、保つ能力をやり遂げるだけでも、かなり大変だと思う。

 

差別化の源泉としての現場力を実現しようと思えば、「保つ」に満足することなく、「よりよくする」「新しいものを生み出す」を新たなコア能力にするための経営的な取り組みが不可欠である。 

 こう書いてしまえば、簡単に見えるけど、これは相当に難しい。

 

現場を取り巻く環境は、内外とも流動的である。内を見れば、人の入れ替わり、設備の劣化や更新、新商品や新技術の導入など、業務を不安定化させる要素はいくつもある。時として「異常」も発生し、それに対処することも求められる。 

そうなのです。現場は移ろいやすい。

その中で業務を一定化させることは難しい。

 

属人的な仕事のやり方を排除し、みんなが何でもできる現場にする。「しか」を減らし、「でも」を増やす努力によってこそ、「保つ」を遂行する現場の生産性、競争力は高まる。 

属人性は、現場の悪。

誰かしかできない仕事を排除して誰でもできる仕事にする。

それで、やっと保つことが可能となる。

 

「保つ」ための改善は、標準を保つことができずに発生したギャップ(=問題)に対処するためのものだ。ここでの改善は、あくまでも標準を保つためのものである。  それに対し、「よりよくする」ための改善は、標準を超えるより高い目標を実現するための問題を自ら設定し、ギャップを生み出すところから始めなければならない。「保つ」ための改善が「発生型問題解決」であるのに対し、「よりよくする」ための改善は「設定型問題解決」といえる 

よりよくするための改善がどれくらい難易度が高いかがこれでわかる。

標準を超える高い目標を設定し、それを成し遂げることが現場の意義ということがわかってくると、確かに現場は目に見えて変わってくると思う。

 

 「保つ能力」という基盤の上に、「よりよくする能力」「新しいものを生み出す能力」という異質の能力を積み重ねることによって、より高次の現場力を実現することができる。そして、それが独自の競争上の優位性になる。  こうした異質の能力を積み重ねる際に重要になるのが、「規律」(discipline)と「自由」(freedom)のバランス。 

そう。

保つ能力とより良くする能力、新しいものを生み出す能力は異質だ。

保つことは、標準を遂行することになる。

そこでは標準を破ることは許されないことになる。

より良くする能力とは、標準を破ることになる。

これは、言わば二律背反することで、それを実現することは難しい。

ここでは、規律と自由のバランスだと書いている。

 

非凡な現場(extraordinary gemba)  「保つ能力」に加えて、「よりよくする能力」「新しいものを生み出す能力」を確立している。業務遂行を確実に行うだけに留まらず、価値増大に直結する改善や創意工夫が自律的かつ継続的に行われ、競争力強化につながっている。 

非凡な現場とはどうしたらよいか。

かなり禅問答的な書きっぷりになっているが、要は自律的と継続的ということが重要となる。

 

デンソーが現場での活動を通じて高い組織能力を構築している理由は、「何のためにその活動を行うのか」「何にこだわってその活動を行うのか」を現場の全員が理解し、納得し、腹落ちしているからなのだ。これを私は「合理的な必然性」と呼ぶ。

現場はやらされ仕事ではなく、いかに腹落ちするのが重要である。

 

現場力の強化には本社の関与が不可欠である。関与とは「環境づくり」と「支援」である。

そうなのです。

本社がどうあるべきというのは、現場力を向上させるには重要である。

環境づくりと支援と言うのは、まさにそうだと思う。

 

環境を整えるためには、

[第1の鍵]全員をナレッジワーカーに育てる

[第2の鍵]「コア人材」を育てる

[第3の鍵]チームで育てる

[第4の鍵]規律を埋め込み、自由度を高める

[第5の鍵]あえて制約を課す

[第6の鍵]細部にこだわる

[第7の鍵]顧客を背負う

[第8の鍵]ミッションを担う

コアな人材を育てるというのは、こういう企業文化を変える時には、必ず必要なことである。

分身を育てるともいって、経営者がこうしたいということを共有する分身を育て、その分身がまた分身を作りというように増やしていく。

それから、細部に拘るというのは、ディズニーランドのことを書いている本でも重要視されていた。

 

創造は自由から生まれる。「よりよくする」「新しいものを生み出す」とはまさに現場起点の創造である。それを実現させるには、現場の自由度を高めなければならない。  自由度を高めるとは、権限を委譲することである。現場の判断に委ねたほうがよい結果をもたらすと思うものは、現場に権限を与え、任せることが大切である。それが現場の自律につながる。

「保つ」ことすら満足にできない規律を欠いた現場に自由度を与えるのは自殺行為にほかならない。

保つことができて始めた現場に権限を移譲する。

そうすることで自由度がまして、よりよくする能力、新しいものを生み出す能力が育ってくる。

 

現場は理詰めだけでは動かない  その一方で、現場の真のすごさは理を超えたときに発揮される。  東日本大震災の例を出すまでもなく、自然災害や大事故のような有事のときに発揮される現場力はとてつもなく大きい。それを平時に発揮させようとするならば、日常の中で理を超えた情への働きかけが不可欠である。  先達の熱き思いや未来の夢や可能性を語り、共に背負う。理を超えたところに真の現場力は存在する。

これが回答な気がする。

 

現場力は、その漢字を見ると何となくわかった気になるフレーズである。

でも、そのちからをつけていくのは、とても難しい。

 

ただ、そうしないと企業として勝ち残れないと思う。

 

現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践
現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践 遠藤 功

東洋経済新報社 2014-10-24
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